15、オシカツ引退

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 駅近の居酒屋に入ると座敷席に座った。そして、4人は名刺交換を始めた。 「え〜タッチって社労士だったの?俺と似たようなもんじゃない?」イッチが言う。イッチは市原由伸。大企業の人事部所属だった。 「俺、労務よ。これからも相談に乗ってよ」 ジローとアッチーは顔を見合わせて、いきなり頭を下げた。 「ごめん。俺らはリアルの友達なのよ。大学からのアイドルオタで実は妻帯者なんだ。俺らも引退を考えてた。だって嫁は理解があっても娘に嫌われたくないもん」 ジローは冴島次郎。アッチーは大森淳也。2人共職場も同じで銀行勤めだった。 市原は笑いながら言った。 「そんなのどうだっていいよ。俺らも今日でオシカツ卒業だ。これからは飲み友達ということで……じゃあ、爆弾落としてやるから」 達也と次郎と淳也が、怪訝な顔をしていると市原がスマホを手にして何やら打っていた。10分ほどして、みなみが店に入ってきて、市原の隣に座った。 市原は、嬉しそうに言った。 「俺の彼女。羨ましいだろう。18歳だぞ。推して推して推しまくって引退してもらった」 達也の背中側の席から声がした。 「みなみ先輩、ダメじゃないですか。18歳何年目ですか?彼氏にカミングアウトしなきゃダメですよ」 さちがニコニコして達也の後ろから顔を出した。 「Sachi ⁈カミングアウトはしてあるわよ。この人の冗談よ。ね?」 「うん。本当は25だ」市原もニコニコしている。 「私もそっちのテーブルに移っていいですか」と、さちは言うなり達也の横に無理やり割り込んだ。
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