15、オシカツ引退

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 話が違うと達也は思っていた。 達也は自分の推しカツをさちにカミングアウトした。でも、もう引退するとも言った。 そうしたら、さちは、「そういうの見たことないの。そばで見ていてもいい?」と言ったから連れてきたのだ。 「みなみ先輩の引退って聞いて、頑張ってたんだなぁって思いました。アイドルの25歳は限界でも本当の人生はこれからですよ」とさちが、みなみに言うと「年下の後輩が生意気」とみなみが笑いながら言い返した。 市原が達也に「タッチ、この子は?」と訊いた。達也はしれっと「僕の婚約者」と言った。  さちとみなみが、懐かしそうに楽しそうに話している。ジローとアッチーは会社の愚痴まで話し出した。  4人の非モテ男の集まりだと思っていたら、実際はこんなに違う。10年近く4人でうちわ振って何人かのアイドルを追いかけた。アレが本当の自分達で楽しい時間だと達也は思っていた。  我ながら大嘘吐きだなと思った。本当に欲しかった友達も自分の彼女も欲しくないふりをしていた。  リアルな世界は、こんなにもありきたりで楽しくてカオスだ。  今度会うときは、みんな家族や彼女を連れてデイキャンプを提案しようと思った。
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