17、剛史と麻理ちゃん

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17、剛史と麻理ちゃん

 さちが達也の家から自宅に戻ると、家には3歳ぐらいの男の子を連れた剛史が来ていた。剛史の父とさちの父は将棋を指していた。 「あれ?その子どこの子」とさちが剛史に訊くと剛史は「俺の長男。俺とマツの子」と言ってニヤリと笑った。 「マツ……麻理ちゃんは?」とさちがキョロキョロと周りを見回した。 「買い物に行ってる。俺の母ちゃんと、さちの母ちゃんと3人で。マツと一緒になるの親にやっと許してもらえたんだ。同居が条件だけどな」 「あのさ、そのマツって呼ぶのやめなよ。昔は麻理ちゃんって呼ばれてたよ。私には麻理ちゃんだよ。小学生の時は仲が良かったんだよ。中学から先のことは、もう忘れようよ」 「俺さ、武藤のこと何となく分かった。中学の頃のダチに聞いたら分かった。武藤をあんなグループに入れた俺が悪いな。さちが怒るのは当たり前だったな」 「それは、もう忘れて。過去のことは言わない。言った私が悪い。職務違反スレスレだもん。西田君は関わってないんだし」 「そうだな……でも、反省はする。さちのいう通り、俺はずっとずっと麻理が好きなのに誤魔化してた。それが一番の間違い」 「わかったなら、麻理ちゃんとその子を守ってあげてね。そうしたら、もう一回、西田君が好きになるかも」 「誰がお前なんか相手にするか!」そう言った剛史の顔は笑っていた。  人生は、ほんの少しの事で変わってしまう。麻理ちゃんだってきっと同じだとさちは思った。  
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