18、初心者同士

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18、初心者同士

 12月の半ば、達也は、さちとお泊まり旅行に出かけた。土日の一泊だ。 高輪のホテルの日から9ヶ月が経っていた。達也は達也で、さちはさちで、親には嘘をついて家を出てきた。達也はゴルフバッグまで車に積んできた。達也の口実はゴルフだった。  達也の車、トヨタのセンチュリーに、さちはもう何度も乗せてもらっていた。達也の運転は優しくて安全運転だった。  今日という日が、どんな日なのか2人は分かっていた。きっと忘れられない日になる。車は館山道を降り、館山市内の有名な高級旅館に入った。全室露天風呂付き部屋だ。そのスイートルームを達也は予約していた。 部屋には、部屋の広さの倍のオープンデッキが付いていて、そこから海が見える。 さちが「割り勘……」と言いながらお財布を出すと、達也は笑いながら「今日は僕に払わせてよ」と言った。  その日はとても天気が良かった。少し寒かったけれど、2人で並んでオープンデッキから沈む夕日を見た。時々、達也がさちの肩に回した手で、さちを抱き寄せてキスをする。そのキスも初めての頃より深く深くなっている。  さちは部屋のベッドを見ないようにしていた。達也も同じだった。 創作フレンチのコースをレストランで食べて、部屋に戻ると達也に促されるまま部屋のお風呂をさちが先に使った。さちがバスローブを着て部屋から出ると、入れ替わりに達也がお風呂場に入っていった。
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