18、初心者同士

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 セックスという行為は不思議なものだ。他人同士だった男女を最も近しい存在にする。 さちは、達也に抱っこされるような姿勢のまま眠った。達也は、その幼さが残る寝顔が本当に愛しかった。 翌朝は、2人でオープンデッキにある陶器の掛け流しの浴槽にゆっくり浸かった。浸かりながら、抱き合いキスを繰り返した。  さちは、もう達也の前で裸でも恥ずかしく無くなっていた。  それからのデートは、2人でホテルで抱き合うのがデートになってしまった。2人ともそうしたかったからそうなった。 平日にも会うようになっていった。その分、事務所では知らん顔をしていた。  達也は、公私共に充実していると感じていた。母が煩く『結婚しなさい』と言っていた意味がわかるような気がしてきた。  でも、相手は誰でも良い訳じゃない。それも分かっていた。  大人しい自分が、ストーカーまがいの行為をするほど好きだった女性が相手だからだ。  さちに好きになって貰えて幸運だった。嫌われていたらどうだっただろう…… その疑問を、さちに言ったら「あり得ない」と言われた。 「縁ってよく言うでしょう?縁があったんだと思う。言い換えれば運命かな。そうとしか思えない。達也さんが、ストーカーまがいの事をしたのも縁のなせる技よ。あの時のあなたの表情(かお)に私はドキッとしたんだもの」
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