2、盗み聞き

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阿部が、さちに色々とツッコミを入れていた。ついでに場所と凡その時間まで話題にしてくれた。  達也は、さちが言う「会いたい男の子」は、きっと特別な何かが間にあった男なのだろうと思った。 なんとなく、さちの口調が何時もと違う気がした。すごく気になった。  達也は自分が思っているよりずっと「太田さち」という15歳も年下の女性に心を惹かれていたのだ。でも、どうしていいのか分からない。今、さちに決まった彼氏がいないのは、この盗み聞きで知っていた。  阿部が言っているように同窓会が出会いの場だとしたら、さちが会いたい男の子が来週には「さちの彼氏」になっているかも知れない。    達也が、1人でママ弁を食べているのは事務所の日常だった。女子所員達が陰で達也のことを「残念な(ひと)」と噂をしているのも何となく達也には分かっていた。 何が残念なのかも……父から譲り受けた事務所の業績もいい。仕事はできる方だと思う。でも、達也は女性から『良い人』の枠に入れられてしまう。男性としては見られてない。女性に対して仕事以外の話をするのに気が引けてしまう。若い頃からそうだ。自称167の身長も本当は167にも足りていない。 どうしていいのか分からない。どうしたら『良い人枠』から抜け出せるのかも分からない。  それでも、達也は明日のさちの同窓会会場となっているホテルに行ってみようと思った。ストーカーみたいな行動だとは分かっていた。
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