噂の黒マント ~街角の隠者~

11/14
前へ
/14ページ
次へ
「そこだよ。魔術はこの世の理にとって反則級の力だ。昨今の流行りで言えばチート(・・・)だな。エリハの世界観は因果応報を歪め、世の理を混沌に変える……たとえば、社会に不満を持つ人間の破壊衝動を解放し、通り魔に仕立てて愉しんでるあんたのような輩によってな」  通り魔……って、じゃあ、わたしがさっき恐ろしい考えに捉われたのは、この易者がなんか変な術をかけたからなの? そういえば、あの悪魔のカードを見つめていたら、だんだんおかしな気分になってきたような……いや、もしかして、これまでの通り魔事件も、わたしと同じように術をかけられて……。  小難しいながらもなんとか話を理解しようと耳を傾けていたわたしは、黒マントのその言葉で不意にすべてを理解する。  けど、なんでわざわざそんなことを……。 「フン。魔術師が魔術を使うことこそ自然の慣い。それになんの問題がある? いや、そればかりか悩める者達の心に秘めた願望を解き放ち、彼らを苦しみから救ってやっているのだ。むしろ占い師として真っ当な責務を果たしていると言えよう」  わたしのその疑問に答えるかのようにして、老易者は黒マントにそう反論をする。 「愉快犯がよく言う……ま、一時的にせよ、それで心の救われる者のいるのも確かだろう。が、その行き着く先に待っているのは世界の崩壊だ……故に俺は貴様らを止める。因果応報の理を守るためにな」  対して黒マントも哲学的な意見を返し、どうやら二人の意見は平行線のようである。 「魔法博士(マグス)エリハの弟子とも思えん言動だな。貴様とわしとでは、どうやら世界観に違いがありすぎるようだ……ならばなんとする? どう止める気じゃ?」 「無論。魔術には魔術の力で。それもまた因果応報だ」  話し合いで解決がつかないとわかり、二人の間にはなにやら不穏な、ピンと張り詰めた空気が漂い始める。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加