噂の黒マント ~街角の隠者~

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「おもしろい。魔法博士(マグス)エリハの弟子の力、どれほどのものか確かめてやろう……この〝(パワー)〟を使ってな」  老易者はそういうと一枚のタロットを手に取って、それを黒マントへ見せつけるように掲げた。  そのカードにはライオンを手懐ける、若い女性のような絵が描かれている。 「タロットよ! 〝(パワー)〟のカードよ! わしの中に眠る、乙女に手懐けられし荒ぶる力を解き放て!」  そして、そのカードを裏返すと絵を自らの方へ向け、まじまじとそれを見つめながら何かを呪文のようにして唱える。 「自己暗示による筋肉のリミッター解除。いわゆる火事場の馬鹿力……カテゴリー〝(パワー)〟の魔術だな。ならば、こちらはそれを超える神仏の力で応えよう……オン・ウーン・ソワカ」  対して黒マントは指を交差させる特異な合掌をすると、こちらは文字通りの呪文をその口にする……瞬間、彼の雰囲気がなんだか変わったように感じた。  例えるならば、格闘家とかアスリートとかの持つ、独特な威圧感に似たようなものだろうか? 「カテゴリー〝隠者(ハーミット)〟に属するもう一つの魔術、〝神人合一〟によって金剛力士を憑依させた。即ち、今の俺には仁王さまと同等の腕力が備わってるということだ。さあ、どうする?」 「フン。神仏の憑依といっても基本原理は〝(パワー)〟のリミッター解除と同じ……あとはその深化の差だ。魔法博士(マグス)エリハの考えを理解せぬ貴様ごとき、どれほどの者ぞ!」  またもよくわからないことを言って挑発する黒マントに、負けじと小難しいことを(うそぶ)いた老易者は続けざま殴りかかってゆく……しかも、老人とは思えないような速度と身のこなしだ。 「せあああぁっ…!」 「そう。確かに深化の差だ……」  だが、黒マントは淡々と呟きながら、強烈な一撃をいとも簡単に受け止めてしまう。
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