2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おもしろい。魔法博士エリハの弟子の力、どれほどのものか確かめてやろう……この〝力〟を使ってな」
老易者はそういうと一枚のタロットを手に取って、それを黒マントへ見せつけるように掲げた。
そのカードにはライオンを手懐ける、若い女性のような絵が描かれている。
「タロットよ! 〝力〟のカードよ! わしの中に眠る、乙女に手懐けられし荒ぶる力を解き放て!」
そして、そのカードを裏返すと絵を自らの方へ向け、まじまじとそれを見つめながら何かを呪文のようにして唱える。
「自己暗示による筋肉のリミッター解除。いわゆる火事場の馬鹿力……カテゴリー〝力〟の魔術だな。ならば、こちらはそれを超える神仏の力で応えよう……オン・ウーン・ソワカ」
対して黒マントは指を交差させる特異な合掌をすると、こちらは文字通りの呪文をその口にする……瞬間、彼の雰囲気がなんだか変わったように感じた。
例えるならば、格闘家とかアスリートとかの持つ、独特な威圧感に似たようなものだろうか?
「カテゴリー〝隠者〟に属するもう一つの魔術、〝神人合一〟によって金剛力士を憑依させた。即ち、今の俺には仁王さまと同等の腕力が備わってるということだ。さあ、どうする?」
「フン。神仏の憑依といっても基本原理は〝力〟のリミッター解除と同じ……あとはその深化の差だ。魔法博士エリハの考えを理解せぬ貴様ごとき、どれほどの者ぞ!」
またもよくわからないことを言って挑発する黒マントに、負けじと小難しいことを嘯いた老易者は続けざま殴りかかってゆく……しかも、老人とは思えないような速度と身のこなしだ。
「せあああぁっ…!」
「そう。確かに深化の差だ……」
だが、黒マントは淡々と呟きながら、強烈な一撃をいとも簡単に受け止めてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!