噂の黒マント ~街角の隠者~

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「辛うじて生きてはいるが、こいつはもう再起不能だ。これ以上、犯行は続けられまい……ま、信じてくれるかどうかは微妙だが、警察が来たら黒マントがやったと正直に言えばいい。そのウワサが広がれば、同類どもの抑止力にもなるだろうしな」  都市伝説に囁かれる怪人が、今、わたしの目の前でぺらぺらと普通に話をしている……ここまでのことももちろんだが、あまりにも非常識すぎて現実味のカケラもない。 「とはいえ、警察のご厄介になるわけにもいかんし、あまり人に見られたくもないのでな。これにて失礼する。では、そういうことで……」  そして、やはり固まったままでいるわたしをその場に残し、まるでパルクールかボルダリングでもするかの如く、建物の出っ張りを使ってスルスルよじ登ると、路地裏の頭上に覗く闇の中へあっという間に消え去ってしまう。 「…………え? ええ!?」  後にはポカン顔のわたしと、泡を吹いて路上に倒れ伏す老易者だけが残されている……平々凡々な小市民のわたしがなぜ、こんなわけのわからない状況下に置かれているんだろうか?  突然、巻き込まれ、そして、また唐突に嵐の如く過ぎ去っていった非現実的な出来事に、わたしは夢でも見ているかのような心持ちで目をパチクリすることしかできなかった。 (噂の黒マント 〜街角の隠者〜 了)
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