黄色の身体

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その部屋は天井からキラキラ光る大きなシャンデリアが吊り下がっていて、壁の四方には陽子様を描かれた絵画が何枚も飾られていた。 「私の言うことは絶対なのよ、お分かり?」 シャンデリアの下の籐で編まれた椅子に腰かけ、脚を組んだ美しい女性の口から心地よい音が響いた。 「もちろんです。他の皆様のように陽子様の奴隷の一人になりたいと心の底から思っています」 私は心にも無い嘘を淀みなく言って陽子様とその周辺にいる男たちの様子を見た。 「私がカラスを白と言えば白なの。あなたの血の色は何色かしら?」 「え?赤ですが。いえ、濃い赤です」 「そうね、血液はやめようかしら。以前、白に変えなさいと言ったら血管に白い絵具を注入して死んでしまった方がいたわ。冗談だったのに。あなたには私への忠誠の証として全身の体毛を黄色にしてもらおうかしら」 「はい、了解致しました」 そんな程度なら痛くも痒くもない。 「あなたには火星の衛星、フォボスに行ってもらうわ。フォボス星人は全身が黄色なの。血液もね。身体はとても小さいから、1トンの血液を集めるのは結構な時間がかかるかも知れないわね」 「えっ?火星に?」 「この黄色い口紅、それで作ったの、良いでしょ。ロケットは大丈夫よ。私の星で作ったから、まだあと数回は飛べるはずよ。じゃあ、明日ね」 ヤバイ。変な団体だとは思っていたが、まさか宇宙人だったとは。 いや、まだ分からない。私を宗教団体の潜入捜査官と見破って、適当なことを言ったのかも。 翌日、全身を黄色に染めて建物の中に入ると誰もいなかった。シャンデリアと壁の絵画もそのまま。籐の椅子を見ると手紙が置いてあった。 「あなたは真面目そうだし、可愛い顔立ちしていたから助けてあげたかったけど、なぜか携帯が繋がらなかったわ。今日の午前十時七分に地球が内部から崩壊することが急遽分かったと、私の星から連絡があったの。さようなら」 携帯を見ると十時六分だ。その直後、激しい振動と音で部屋が崩れてきた。                            完
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