一枚の名刺

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 数ヵ月後、桜井は黒木を呼び出した。 「黒木、だいぶリーダーが板についてきたな。社長も誉めてたぞ」 「そんな、まだまだですよ」 「謙遜するな。時々お前の姿が神崎とだぶる。時々、ドキッとするんだ。神崎がいるんじゃないかってね」  黒木には何よりの誉め言葉だった。 「今、我々は新たなプロジェクトととして再就職支援事業の立ち上げをしている。現在日本はバブル崩壊後、有効求人率の低下それに伴い失業率の増加と歯止めが効かない状況だ。しかしおかげで直接雇用せず人材を派遣に求める傾向が顕著に表れている。だから我々の派遣業は順調に売上が伸びた」  黒木は頷く。 「だからこそこのプロジェクトが重要になってくるんですね」 「そうだ。派遣業自体は伸びるが企業自体が事業整理に追われリストラが横行している。そこで私たちは事業整理のひとつである工場や事業所などの閉鎖に伴う雇用調整のサービスを行う。特に閉鎖などで仕事を失った人々への就職支援を軸にしたのが今回のプロジェクトだ」    黒木はこのプロジェクトを成功させるために日々を走り回った。
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