一枚の名刺

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 三年ほど年月が過ぎた。再就職支援事業のプロジェクトについてはある程度目処が立っていたが、まだ中堅企業の案件を成立させるまでで、大企業の大型契約は実を結んでいない。突然、コンコンとドアをノックされる音が室内に響いた。 「どうぞ」  川村が慌てて駆け込んで来た。顔に高揚感が(みなぎ)る。 「黒木部長。本契約に結びつきそうです。バイレックスの玉城(たまき)部長から連絡が入りました。契約を前提にもう一度話を聞きたいと……」  黒木は立ち上がった。 「本当か? で、バイレックスとの打ち合わせはいつだ!?」  このプロジェクトが成功すれば今、取り組んでいる事業が一歩前進する。大手との契約実績が作れるのだ。今のままでは不利だったがなんとか土俵で戦える。競合の大手は着実に実績を作っている。大手半導体製造メーカータイタンの規模縮小に伴う地方工場閉鎖に対しての就職支援、大手スーパー市富士(いちふじ)の大型店舗数縮小の閉店による雇用調整と様々な案件に手を挙げ参入を試みたが、ことごとく大手ユープランスタッフに辛酸を嘗めさせられた。ユープランスタッフはとてつもない壁だった。しかし今、突破口が開こうとしている。黒木は打ち合わせの日時を聞き、桜井の元に飛んでいった。 「専務、今回のプロジェクトはじめて大型契約が取れそうです」 「どこだ?」  桜井も椅子から立ち上がりデスクから乗り出しそうな勢いだ。 「大手半導体メーカーのバイレックスです」
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