一枚の名刺

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黒木と川村はバイレックス本社の会議室にいた。現在バイレックスは売上低下による大幅な赤字を抱えていた。規模縮小を前提に各地方にある工場を集約し海外への移転計画を進めていた。地方にある工場は八つあるが最重要の宇都宮、福岡を残し他は閉鎖する予定だ。そこで働く従業員には退職金の割り増しと就職支援会社のサポートを約束している。その就職活動サポートを我々が担うことになる……はずだったが……。  実は先程入れ換えに出ていく集団がいた。軽く会釈をしてすれ違ったが襟元の社章を見るとユープランスタッフだった。  ──もしかしてバイレックスはユープランスタッフと俺たちを秤にかけてるのか?──  急いで桜井に連絡を入れた。焦る黒木。電話越しにも桜井は黒木が焦っているのが分かる。 「焦るな黒木。お前なら大丈夫だ。なんたって神崎の部下だったろ。もし息詰まったら神崎を思い出せ。活路はそこにあるはずだ」 「分かりました。なんとかやってみます」  電話を切ろうとした時に桜井が一言伝えた。 「心配するな。神崎がきっとついてる」  電話を切ると黒木は川村の元に戻った。  ──思い出せ、神崎本部長が今まで俺に教えてくれたことすべてをだ──
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