一枚の名刺

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 ドアがノックされ数名が入室してきた。今回の責任者人事部長の玉城(たまき)だ。 「お待たせしました。黒木部長、川村課長」 「この度はお時間を頂きありがとうございます。さて……」  言いかけた所で玉城は手をあげ黒木の発言を遮った。 「申し訳ない黒木部長。実はある企業もこの案件に提案してきたんです。見積も魅力的だった。で、このままでは上層部におたくを推すためのものが絶対的に足りない。なんとかなりませんか?」  先手を打たれた。見積に関しては限界だ。 「そうですか。しかし私たちもこれ以上は金額を下げることはできません」  黒木は言いきった。体のいい返事は出来ない。 「では他に御社を利用するにあたって何かメリットがありますか? ちなみに先方には実績がある。だか御社には……まだないですよね」  深く窪んだ眼で黒木たちを見る玉城。 「そうですね。ありません」  はっきりと答える。 「そうですか。一応上には話しますが……」  残念そうに玉城は答えた。けっして玉城は黒木たちを見下してる訳ではない。逆に今まで相談に乗ってもらった黒木に対しては好印象だった。しかし一雇われのサラリーマンとして企業に勤める以上、玉城も会社の事情には逆らえない。彼らを押すには武器がない、上層部を納得させるものがないと半ば諦めかけていた。 「金額を押さえるということはそれだけサービスの低下を招きます」  黒木は唐突に資料を拡げた。 「サービスはより良いものでなければなりません。それがうちを利用する御社の最大のメリットです」 「ほう? それはなんですか」  玉城は興味深く黒木の言葉を待った。
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