一枚の名刺

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「まるで神崎本部長がプレゼンをしてる様でしたよ。そのくらい熱量がありました。先方の玉城部長も言ってはくれました。うちの案を押してくれるとのことでしたし。ただどうでしょう。最後は金額の問題になるのではないでしょうか」  半ば諦めた様子で川村は肩を竦めた。 「そうか、分かった」  川村が出ていった後、桜井は深く椅子に座った。 「厳しいか。しかし、そうか、神崎に似ていたか」  ふっと笑った。 「さてそれが吉と出るか凶と出るか。どっちだ神崎」  数日が経ち玉城からまだ連絡は入らない。 「むずかしいな……でも桜井専務も神崎本部長もどれだけの場数を踏んだんだろう……俺はまだまだ甘いな」  席を立ち上がりタバコを咥えに喫煙所に向かおうとした。    突然内線が鳴り響く。 「はい黒木です」 「あっ、黒木部長。バイレックスの玉城部長からお電話です」  黒木は身構えた。結果がこの電話でわかる。 「はい黒木ですが。あっ、お世話になります玉城部長」  しばらく黙って玉城の言葉を聞いていた。 「本当ですか? 玉城部長。ありがとうございます。真摯に支援をさせて頂きます」  黒木は見えない相手に何度も深々とお辞儀をしていた。    ちょうど別件で川村がやってきた。 「おい、川村やったぞ」 「はい? どうされたんですか?」  声のトーンが明らかに違う。 「俺たちやったぞ! バイレックスの玉城部長から連絡が来た。俺たちの支援サービスを社長以下経営陣が選択したそうだ。俺たちがこの案件、制したんだ!」  「え? 本当ですか? 部長やりましたね。俺たちを選んでくれるなんて。すみません。正直俺、半ば諦めてました。部長の熱意が心を動かしたんですね。やりましたね! 部長! バイレックス!万歳!」  黒木と川村は抱き合い喜んだ。
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