この思いを君に届けられたら

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ほんの数分前に会ったばかりなのに俺は彼女に惹かれた。俺とは正反対の姿を持つ青空に俺は惹かれたんだ。俺は白い髪をしている。染めたことはない。 生まれ持った白い髪だ。父さんが母さんと出会う前に癌になって、抗がん剤で髪が白くなって。父さんのDNAを多く持ってる俺は髪が白くなっている。 「陸って好きなものある?」 「俺は空と本が好きかな」 小学生の頃、クラスの皆に髪が白いことで馬鹿にされていた。友達なんかいない俺には本というものに出会った。 馬鹿にされて嫌になった俺は小学校の裏にある、なにもない草原に走っていった。その中で一つだけ大きな緑の葉を着ている木が立っていた。 気になって近づくと一つの本があった。誰のかもわからない本を手にとって読んでみて、本の世界に没頭した。あれ以来俺は本を読むことが好きになった。 空が好きなのは、広くて綺麗な青色を保っていて、どんなに黒い雲がかかっていても、必ずまた綺麗な青色を見せてくれるから。 「青空はなんで入院してるの?」 口にしてから『しまった』と思った。言いたくないこともあるかもしれないのに、気遣いもなく唐突に聞いてしまった。 「私は、癌だよ。余命あと一年もないって医者に言われて。もう、いつ死んでもおかしくないんだよね」 俺は驚いた。癌であることも、余命あと一年もないことも。でも一番驚いたのは、笑顔でそれを言う青空にだ。なんでそんなに笑顔で言えるの。死ぬのが怖くないの? 「なんでそんなに笑顔でいられるの?」 「だって、悲しんだって運命は変わらないでしょ?悲しんで暗い毎日を送るより笑顔で毎日を過ごしたほうが未練がないじゃん」 微笑んで答える青空。彼女の言葉に納得した。それっておかしいことではない。悲しい毎日より楽しいほうがいい。全人類に問いかけたらみんな楽しい方を選ぶだろう。 「陸、あとどのくらい生きれるかわからないけど。終わりが来るまで仲良くしてくれる?」 青空、そんなこと言わないで。そんな悲しいこと言わないで。 「うん、仲良くするけど。そんな悲しい言葉言わないで」 青空は目を大きく開いて微笑んで謝ってきた。謝らなくてもいいのに。悲しい言葉を言ってしまうのは皆そうなんだから。俺だって言うだろう。 青空みたいに悲しい現実を突きつけられたら俺は立ち直ることが不可能になるかもしれない。それでも青空は立ち直ってる。笑顔でいる。 せめて悲しい言葉を言っても許される。でも青空には希望を持ってほしい。そんな気持ちに心は溢れた。
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