終わりからの始まり

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 あー。もう戻れない。本当はもう、ずいぶん前から引き返せなくなってたのかもしれない…。    魅惑の香りに引き寄せられ、とうとうそれに食らいついてしまったから。  もう、この味を知ってしまったから。もうあとには引き返せない…。    若い男子に必死に食らいつく年上の独身アラサー女の私がこんなにも初恋みたいにキュンキュンして心を踊らせてるなんてきっと思いもしないだろう。 「じゃあ、たった今レンタルは終了。」 「うん…」 「これからうち、来る?」  涙で一杯の目で彼を見上げると素敵な笑顔が涙で霞んでよく見えなかった。そのせいか、十も年下の彼がずいぶん大人に見えた。漆黒の夜空に浮かぶ大人の空気を身に纏った彼の魅惑の香りに誘われて今夜も私は彼に惑わされる。  彼の魅惑の香りに誘われた私はきっと今夜も貪るように喰いつくだろう。  涙でぼろぼろの私にそっとキスをしてくる彼に私もとびきりの笑顔で濃厚なキスを返した。  その彼のキスは惑わすような魅惑の黒トリュフの香りがした…。
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