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「なに?ホントになんも覚えてないの?」
「そう、みたい…。」
「じゃあ昨日の夜の俺とのアレも覚えてないって訳か。」
「え?俺とアレ?」
「なんてね。」
カーッと顔が熱くなる。
「シてないよ?最後まで、はね。」
「え、最後までって?」
「それに言っとくけど俺からはあんたになんもシてないから。」
「俺からはって?」
「あんたは酔っぱらって俺に絡んできたけどさ。」
そう言って自分の首もとをヒラヒラとみせてきた。
くっきり首筋にキスマークがついてる。
「え?それ、あたし?」
「ん?他に誰がいる?」
部屋を見渡す真似をする。もちろん部屋には私たち意外、誰もいない。
「あ…、ごめんなさい…。」
「アラサーで独身、目の保養で俺に会いに毎日通って来てるって言ってたもんな。」
「うっっ…。」
恥ずかしすぎてもう、消えたい。
「まあね、酔っぱらってした事だし?」
「ごめんなさい。ホントごめんなさい。」
「そこはさ、まずありがとじゃない?」
「え?」
「だからさ、酔ってるところを介抱して、泊めてやって洗濯までしてやって?今こうして朝飯も用意してやってる。」
「あ。」
テーブルの上にはパンやコーヒーやサラダ。スクランブルエッグのいい匂い。
お腹がぐうっと鳴る。
「さ、食べよ。座って?」
「あ、先に顔洗ってくる。」
とりあえず逃げるように一旦その場を離れた。深呼吸をして。
顔を洗って洗面台の前で自分の顔を覗く。
化粧が崩れて顔はむくんでるし目の下にクマもある。
最悪だ。最悪なシチュエーション。
すっかり落ち込みうなだれて席につく。これじゃ、彼にも呆れられよな。
そもそも可能性なんかなかっただろうけど、これで終わった。
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