目が覚めたら彼の部屋でした。

2/2
前へ
/14ページ
次へ
「なに?ホントになんも覚えてないの?」 「そう、みたい…。」 「じゃあ昨日の夜の俺とのアレも覚えてないって訳か。」 「え?俺とアレ?」 「なんてね。」  カーッと顔が熱くなる。 「シてないよ?最後まで、はね。」 「え、最後までって?」 「それに言っとくけど俺からはあんたになんもシてないから。」 「俺からはって?」 「あんたは酔っぱらって俺に絡んできたけどさ。」  そう言って自分の首もとをヒラヒラとみせてきた。  くっきり首筋にキスマークがついてる。 「え?それ、あたし?」 「ん?他に誰がいる?」  部屋を見渡す真似をする。もちろん部屋には私たち意外、誰もいない。 「あ…、ごめんなさい…。」 「アラサーで独身、目の保養で俺に会いに毎日通って来てるって言ってたもんな。」 「うっっ…。」  恥ずかしすぎてもう、消えたい。 「まあね、酔っぱらってした事だし?」 「ごめんなさい。ホントごめんなさい。」 「そこはさ、まずありがとじゃない?」 「え?」 「だからさ、酔ってるところを介抱して、泊めてやって洗濯までしてやって?今こうして朝飯も用意してやってる。」 「あ。」  テーブルの上にはパンやコーヒーやサラダ。スクランブルエッグのいい匂い。  お腹がぐうっと鳴る。 「さ、食べよ。座って?」 「あ、先に顔洗ってくる。」  とりあえず逃げるように一旦その場を離れた。深呼吸をして。  顔を洗って洗面台の前で自分の顔を覗く。  化粧が崩れて顔はむくんでるし目の下にクマもある。  最悪だ。最悪なシチュエーション。  すっかり落ち込みうなだれて席につく。これじゃ、彼にも呆れられよな。   そもそも可能性なんかなかっただろうけど、これで終わった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加