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レンタル彼氏
「いただきます。」
「いただきます。」
そう言ったけど、目の前のものに手をつけられずにいる。昨日の晩の事が気になってしかたがない。
「ん?食べないの?」
「あ、あの…」
「なに?」
「あたし、なんか言ったりした?なんかしちゃったり、した?昨日…」
「あー。俺にキスしてきた事とか?」
「え!!?」
「最近はキスもデートもしてない事とか?だから1日1万円で買い物と食事するだけのレンタル彼氏はどうだとかって?俺にしてきたその話しの事?」
「え?ホント最悪。」
「どうせ酔って覚えてないんだろ?俺だって別に本気にしてないよそんなの。」
「うん。本気にしないで。忘れて忘れて…」
もう、苦笑いしかない。
「けどさ。悪くないね、その話し。」
「え?」
「だってさ、買い物付き合ってめし食うだけで1万だろ?ならスゲーいいバイトじゃん。うん、悪くない。」
「ホント?」
って。バカバカ!なにちょっと喜んでんだよ、あたし!
「いいよ?別に俺は。レンタル彼氏。」
「え、だって君いくつ?」
「22。大学四年、名前は大地ね。」
「うわぁ。十歳も下じゃん。大地君」
「へぇ32か。見た目よりオバサンだな、菜摘。」
「な…菜摘!?」
「菜摘だよな、確か名前」
名前もばれてる…。て言うか呼び捨てだし。
「でも見えないよ。二十代に見えなくもない。」
「それ見えるって事?」
「まあね…。」
クスッと笑って彼がポケットから何かを取り出した。
「いいよ?ほら。」
彼がスマホを私の前にさし出してきた。
「え?」
「だって俺をレンタルするなら連絡先、交換するだろ?」
「あ、あぁ…。
そうだね、とりあえず今回のお礼とお詫びしたいしご飯くらいは御馳走する。」
そう言って自分にも彼にも言い訳しつつ、本当は飛び上がりたいほど喜んでる。年甲斐もなくこんなにもピチピチの男子とこうして…。奇跡的な瞬間にいる今に。
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