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彼氏じゃない彼と一夜限りの夢
「お待たせ。」
爽やかな笑顔が近づいてくる。
朝から美味しいものを散々食べてお腹も膨れて昼過ぎには川沿いをブラブラ歩き、観覧車にも乗った。夜はおしゃれなバーでお酒を飲んで今日もおしまい。
「そろそろ帰ろうか。」
そう私が声をかけると彼は吸い込まれるような瞳で黙ってこっちをじっとみてきた。
「今日も…帰るの…?」
「え…?」
「別に…泊まってもいいけど?」
「それは契約外でしょ。」
「そんな契約なんか、したっけ。」
「したじゃん、ご飯と買い物とお出掛けって。」
「いいの?それだけで。」
「なによ、酔ってる?あたしがそこまで寂しい女だとか思ってた?」
「別にそう言うわけじゃないけど。色々契約外のオプションつけてもいいよ。なんてね。」
「ケッコーです。そこまであたしを惨めにしないで。」
「ふーん。」
彼は今日、なんだか様子が違った。
すると彼に電話がかかってきた。
離れたところで話してるけど声が洩れてる。
どうやら別れ話をしてるみたいな雰囲気だ。長い会話の末、ようやく電話を切って戻ってきた。
「大丈夫?」
「へへへ。気付かれちゃったか。そう、今彼女と別れたんだ。俺。」
「え…。」
「大学に入ってすぐに付き合ったからもう三年以上になるんだけど。」
「まあね、人生これからだしきっとまたいい出会いがあるよ。」
なんてね、こんな時ばっかり大人ぶって。
「なに、俺を慰めてくれんの?」
「まあ、のものも。」
そして彼は泥酔した。
「今日は特別サービスつけるよ。追加料金無しでいいから。もう少し俺と一緒にいてくれない?慰めてくれるんだろ?」
弱った子犬みたいな目で私を見てくる。
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