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だから今夜はそんな彼を置いては行けなかった。
そして…。
「なんもしないから休んでいこ。隣で寝るだけ。レンタル彼氏の延長の追加料金なんか請求しないから。」
そんな風に言われてホテルにはいった。
「ホントに横で寝るだけね。」
「分かってるよ、どうせ俺レンタル彼氏だし。」
本当は心のどこかでちょっとだけ期待してた…。
「いいの?ホントに何もしなくて。」
ベットの上で隣に横になってる彼が暗がりの中こっちをじっと見てそんな事を囁く。
「え?」
「ねぇ。キスだけならいいじゃん?キスしよ。どうせ最近あんまりしてないんだろ?もう初日にキスは俺たちしちゃってるんだし。今レンタル中なんだから…」
彼は酔ってるだけだ。勘違いしちゃダメ。彼は今日きっと彼女にフラれてやけになってるだけ。私の事なんか別に好きじゃないし。
だけどその甘い囁きを拒むことが出来なかった。
酔った彼の唇が静かに近づいてくる…。
この前の記憶は酔ってて無いはずなのに、私はその唇の感覚を知っていた。
そう。あの時も彼はこんな風に優しく私の唇を捉えこんな風にしてきた。
ふとよぎるシーン。断片的に頭に浮かんだ。そうだ、あの晩もこんな風に優しかった。
だけどやっぱりキスしたらそれ以上もしたくなる。彼が延ばしてきた優しいその手を振り払う事が出来なかった。
肩を抱いていた彼の指先がゆっくりと移動していく。その動きにゾクゾクして肌の表面に鳥肌が立ち体の奥が痺れていく。もうすでに私の体はそれを拒むことが出来ない。
彼の腕のなかで私は一夜限りの夢をみた。
いいじゃない。お互いに慰め合う関係でも。
彼は私の彼氏じゃない。
私は彼の彼女じゃない。
彼は私がお金を払ってデートするレンタル彼氏だから。
本気になんかならない。
それに今日だけ特別。
フラれた彼を私が慰めてあげるだけ。彼だってきっとそのつもりだ。
だから勘違いしない。
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