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全1話 風鈴恋歌
東京からほど近い小江戸と呼ばれる「蔵の街」。その一角に佇む由緒正しいお社は、縁結びの神として知られています。
夏の雨上がりの日、浴衣姿の若い女性たちがたくさん集う中で、華やかな雰囲気に包まれる珍しい神事が行われます。そっと、覗いてみましょう。
境内に設置された回廊棚には、二千個の色とりどりの江戸風鈴が飾られ、情緒豊かな景色を創り出します。女性たちの切なる願いが書かれた木の短冊を結んだ風鈴が、回廊を吹き抜ける風を受け、心地よい軽やかな音色を奏でます。
夜の帳が下りると、午後六時を告げる鐘楼の音色が境内に響き渡ってゆく。境内を流れる小川に明かりがひとつふたつと灯され、幻想的な風情が漂います。
そよ風の便りが銀河の架け橋となり、天の川に彼女たちの恋の願いを届けてくれるかもしれません。
若い女性たちの切なる願いは、風鈴の音色とともに夜空へと舞い上がり、星々の間をすり抜けて、やがて天の川の彼方へと届くことでしょう。彼女たちの心の奥底に秘められた想いが、星の光に導かれ、憧れの君から永遠の愛へと繋がることを願って……
夏の夜、雨上がりの神社にて
浴衣姿の若い女性たちが集い
色とりどりのガラス鈴が
それぞれの想いを乗せて風に揺れる
「風鈴恋歌」のささやきが放たれる
鐘楼の音色が厳かに響き渡り
川面に灯りがともされると
時の流れが恋の願いを運ぶ
憧れの男性を一途に想い
その姿を夜空に描きながら
ひとり、熱き涙に包まれる
彼女の心は、夜の静寂に溶け込み
切なる想いが星空に届くことを願う
その涙は、恋の儚さと美しさを映し出し
「風鈴恋歌」が銀河に解き放たれる
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