相手を選ぶ風の子

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 合宿というのは厄介なシステムだ。なぜなら逃げ場がない。  ここは山の中。バスしか交通手段はないし、それは最終日にしかやってこない。近くにお店もない。  自販機と小さな購買しかない。部屋は大部屋で、1人になれる場所もない。楽しいと浮かれていたけど、よく考えたら監獄みたいな場所。  そこで負の感情が生まれたらろくなことにならない。 *******  夕飯の後、いよいよ夜間訓練が始まった。異能犯罪者が夜の山林に逃げ込んだ……という想定。  全員コスチュームに変身し、犯罪者役を務めるノイズ先生を追いかける。  私も樹々の間を駆け抜け、ノイズ先生の起こす爆発音を頼りに追いかける。横にはさっき合流した穂村が。 「俺の異能、こういう時全然使えないんだよな……」  赤と黒のコスに身を包んだ穂村……いやケフェウスは、困った顔をしている。  そう、異能による二次災害は厳禁。だから穂村の炎は使えない。 「ちょっと空飛んでみるね」  私は穂村を置いて羽を生やした。高く飛べば山を見下ろせる。まるで巨大なブロッコリーを見下ろしているような感覚。  爆発音と煙が。あそこだ! 私は手に炎を灯し、空を移動した。これなら森の中にいる穂村にも見えるから。  だが地面に降りた頃には、既にノイズ先生は消えていた。代わりに怪我をした響が。 「響大丈夫!?」 「どうした!」  穂村も徒歩で追いついた。私たちは治療しようとしたが、風に乗って風磨がやってきた。
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