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グリルの中からしゅぅぅという音が漏れはじめ、同時に芳ばしい匂いが立ち昇ってきた。
換気扇もコンロと同じ歳を重ねているのか、古くて動きが鈍い。ちょっと炒め物をしただけでも匂いがすぐに拡がってしまう。
一人暮らしだからあまり気にしていないし、料理の匂いは最高の調味料とも言うし、これはこれで良いと思って今に至っている。
ぎゅううと勢いよくお腹がなった。
この音を彼が聞いてたらなんて言うだろう。
疑問が浮かんだところで、キッチンの隣のリビングからあわせたように彼が顔を出した。
「俺もお腹減ってきた」
頭の中で生まれた言葉が耳から入ってきたので驚き、ちょっとだけにやりとしてしまう。
彼のことが少しだけわかった気がしたから。
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