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「黒ムツの塩焼きだよ」
きっと聞かれてるだろうけど、恥ずかしいから聞かれていないふりをして答えてみる。
「黒ムツか……睦海と一緒の名前のやつね」
「何そ……」
言い終わる前に唇を塞がれた。
柔らかくも力強く吸いついてくるキス。さっき飲み始めたばかりの日本酒の甘さを感じた。
初めてキスされたときは息が詰まり苦しさが勝っていたけれど、何度も重ねるうちにしっくりくるようになってきた。
いつも前触れのない始まりに今日も身体がこわばる。でも、ゆっくりと弛緩していく。
いや、やっぱり。
全然わかってないや。
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