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今日は、いつもより早く仕事が終わったので、幼なじみでもある彼にメールを送る。
「もう少しで上がれそうだから、そしたら行くから。待たせて、悪い」
彼のかづきくんこと、香月朔(こうづき・さく)は、海浜総合病院の内科医として勤務しているため、急患が入ることもしばしばある。
小児科で勤務しているあかりとは、時々すれ違いがあったり、少し顔をあわせたりするくらい。
「わかっよ。いつものところで待ってる」
何気ないやりとりに少しだけホッとする。毎日、バタバタしているせいかこの一瞬だけは、ひとりでいられる唯一の時間だった。
バッグからマイボトルを取り出し、淹れてきた紅茶を一口、口に含むと肩の力が自然とぬけた。腕時計を確認すると六時半過ぎだった。
「おつかれ、おまたせ。かなり待たせた?」
声で気づき、振り返ると彼に肩をポンポンとやさしく突かれた。
「おつかれさま」
「ううん、ちょっとだけだから大丈夫。」
「ならよかった」
「よかったら、近くに美味しい店ができたんだ。呑みはナシで。食べてから、送るよ」
「おなか減ってたからうれしい。いいね」
彼の車で、お店へと向かった。
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