第一話 手紙

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 今日は、いつもより早く仕事が終わったので、幼なじみでもある彼にメールを送る。  「もう少しで上がれそうだから、そしたら行くから。待たせて、悪い」  彼のかづきくんこと、香月朔(こうづき・さく)は、海浜総合病院の内科医として勤務しているため、急患が入ることもしばしばある。  小児科で勤務しているあかりとは、時々すれ違いがあったり、少し顔をあわせたりするくらい。  「わかっよ。いつものところで待ってる」  何気ないやりとりに少しだけホッとする。毎日、バタバタしているせいかこの一瞬だけは、ひとりでいられる唯一の時間だった。  バッグからマイボトルを取り出し、淹れてきた紅茶を一口、口に含むと肩の力が自然とぬけた。腕時計を確認すると六時半過ぎだった。  「おつかれ、おまたせ。かなり待たせた?」    声で気づき、振り返ると彼に肩をポンポンとやさしく突かれた。  「おつかれさま」  「ううん、ちょっとだけだから大丈夫。」  「ならよかった」  「よかったら、近くに美味しい店ができたんだ。呑みはナシで。食べてから、送るよ」  「おなか減ってたからうれしい。いいね」  彼の車で、お店へと向かった。
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