2

1/2
前へ
/9ページ
次へ

2

 川の水は止まることなく流れていた。  毎年夏のお盆休みを使って僕は地元に帰省する。家に帰る前に、僕は近所の花屋で買った花を手向けに、美奈絵ちゃんが亡くなった橋に向かう。都会の喧騒を離れ、静かな田舎の風景に包まれると、いつも心が少し落ち着く。けれどその橋に着くと、美奈絵ちゃんの死のイメージが強くなって一気に気持ち悪くなった。  何度訪れていてもその感情は薄れることなく、年々強まっているような気がする。  橋の上に立ち、手に持った花束を見つめる。白い百合の花だ。美奈絵ちゃんが好きだった花。僕はそっと橋の欄干に花を置き、祈るように目を閉じた。 「美奈絵ちゃん、蛍です。もう蛍の季節になったね。僕は今年も家族と一緒に蛍を見に行ってくるよ。美奈絵ちゃんが好きって言ってた蛍。また一緒に見たいな」  そう心の中で呟く。僕は目を開けると、後ろに気配を感じて振り返った。そこには見知らぬ老夫婦がぽつんと立っていた。 「ありがとうございます。美奈絵も喜んでいると思います」  いや、知らない訳がない。少し年老いてはいるが、この夫婦は美奈絵ちゃんの両親だ。葬式以降会っていなかったから、刻まれた皺や白髪が別人のように思えた。  僕はスクッと立ち上がると、ペコリと二人にお辞儀をした。二人ともお辞儀をし返す。 「美奈絵ちゃんのご両親ですよね?」 「はい。君は……」 「入間(いるま)蛍です。美奈絵ちゃんの同級生の」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加