4人が本棚に入れています
本棚に追加
「昔、中学でさ、すごいいじめあったじゃん?」
「あ……あー。あれね。虫食わせたりしてた奴」
「最後とかさー、ケツ掘って動画撮ったりさ」
「え!? そんなことしてたの!? ……うわ……うわぁ……」
「そっか、お前クラス違ったもんな」
「まーね。で、そいつ結局どうなったんだっけ?」
「学校来なくなったまでは知ってる」
「ありがちだな」
「じゃあ、今頃ニートか生活保護かもな」
「うわー。俺らの払った税金で養いたくねぇ」
「つーかそんな話、居酒屋ですんなよ」
「ごめんごめん。でもさ、気になったんだよ」
「はぁ。もう十年以上前の話だろ」
「だってほら」
そう言って、男は居酒屋の壁に設置されたテレビを指さした。
『歪んだ愛情の果てに~市立××中学校いじめ事件の真相に迫る~』
「××中ってうちの学校じゃん」
「そうだよ」
「え、じゃあもしかして……」
テレビの中、緊張感を帯びた顔の司会が、ゆっくりと口を開いた。
「なぜ、糸川 優希君は死ななければならなかったのか。凄惨ないじめ……男同士の歪んだ愛、孤独、絶望。今夜はその謎に迫ります」
軽快な音楽が流れだし、カメラが引いて会場全体を映した。出演者は皆、神妙な面持ちで座っている。そのミスマッチさが少しおかしかった。
「この番組は、皆に希望を届けたい。ハッピー☆ハッピーフレンズの提供でお送りします」
最初のコメントを投稿しよう!