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やっと息子が寝てくれた。またどうせ起きるだろうけど、つかの間の自由時間だ。疲れて風呂に入る気にもならず、ヘッドフォンをかぶってテレビをつけた。
「十年たっても色季の、糸川への執着は消えなかった。彼は出所してすぐ、糸川の住むアパートへと向かった。そして、衝撃の結末はCMのあと!」
何だ。いじめのドキュメンタリーか。こんな時間にやってるのは珍しいなと思いながらチャンネルを変えようとすると、推しの俳優が映った。
「と、その前にこちらの映像をご覧ください」
雨が降る中、男子中学生のコスプレをした成人男性の姿が映る。彼は悲痛な表情を浮かべて
「僕はもう、限界です。お父さん、お母さん、ごめんなさい。もう、生きていくのが厭になりました」
『凄惨ないじめ。歪んだ愛情。そして、少年は自ら死を選ぶ!』
盛大なBGMとともにナレーションが流れる。
そして、画面は映画館へと変わり、女子高生が二人出てくる。
『めっちゃ泣きました!』
『感動しました! いじめはよくないと思います!』
『衝撃のラストをこの夏見逃すな!』
最後に、映画のタイトルがバーンと映し出された。
画面はスタジオに戻り、イケメン俳優が映画のポスターを持って立っている。
「はい! 予告見ていただいてありがとうございます。奈落の美少年の主人公 糸式 優李を演じさせていただく、雲鼓パク太郎です!
この映画は、主題がいじめなだけあってとてもつらいシーンが多いですが、男同士の歪んだ愛の物語でもあります。
美少年、糸式に魅了されて狂っていく色木。色木の無理やりな行為に心を傷つけられながらも、快楽に堕ちていく糸式。その結末をぜひ劇場でご覧ください!」
面白そう。金曜日に母さんが来るし、息子預けて見に行こうかな。
「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!」
「はーい、今行きますよー」
私は素早くヘッドフォンを外し、息子の元へと向かった。
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