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「おい!おせぇぞ、ガキども!」
一喝するように叫ぶ。
待ち合わせ時間に遅れているわけではない。
ギリギリではあったが、まだ5分前だった。
「うるせーよ!」
クラウスはストリート育ちで、過酷な子供生活を送ってきた経験もあってか、大人に対しての物言いは基本的にタメ口だ。
生意気を通り越して肝が据わっている。
なにせ彼は12歳まで、市場の観光客をターゲットにスリや麻薬の密売を働いていた筋金入りの犯罪者だった。
大多数の「大人」は、彼にとってカモだった。
街で生きていくための「商売道具」であり、“資材”でしかなかった。
敬意を抱いたことなど、今まで一度たりともなかった。
「威勢だけは一丁前だな。少しは楽しませてくれるんだろうな?え?」
「…クソ野郎が」
クラウスは本気で勝つつもりでいる。
その証拠に、額に血管が浮き出るほどの感情を露わにしていた。
まあ、それも無理もないだろう。
先週のことだ。
この場所で同じように勝負を挑み、気持ちがいいくらいに歴然とした“敗北”を喫していた。
正面からぶつかって行ったまではよかったが、両手を使わないなどの舐めプをされた挙句、最後は頭突き1発で地面に叩き落とされてしまっていた。
そして、気絶している間に恥ずかしい姿を写真に収められてしまっていたのだ。
あろうことか、その「写真」を学校中にばら撒かれているとは、その時はまだ…
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