史上最年少の訓練生

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 「“フローレン家”って、政府に摘発されたんじゃなかったの?なんで彼が…?」  ルシア・フローレンは、鳳凰院でも有名な存在だった。  何せ、彼は史上最年少で鳳凰院に入学し、学業成績は極めて優秀。  おまけに“いわく付き”とあった。  周りからすれば、”普通の生徒”でないことは一目瞭然だったのだ。  多くの生徒が集う学生寮と言えど、彼に近づこうと思うものはいなかった。  それはやはり、彼が「フローレン家」の人間であるということが原因だった。  「おっす!ルシア」  そんな周りの状況など構いもせず、気軽に彼に話しかけるものがいる。  鳳凰院第36期生、“クラス3“所属のクラウス・ヴァンガード。  オーシャンズタウン出身の15歳の青年で、ルシアとは同郷の仲間だ。  彼らは子供の頃から一緒だった。  もっとも、2人が生まれた境遇は、似ても似つかないものではあったが。  「何?」  ルシアは気だるそうに返事をする。  彼は絶賛読書中だった。  最近ハマっている雑誌、「キャンプカーマガジン」に夢中だった。  そのためにわざわざテラス席を選択していた。  心地のいい日差しが当たる、静かな場所を。  「そんなもん読んでねーで、さっさと行くぞ」  「まだ時間じゃないだろ」  「あと30分しかねーじゃねーか」  「あと“30分も”、な?」  2人はこれから訓練場に向かう予定だった。  バトルロードに向けた追い込みの練習。    鳳凰院の校舎の中には、「バトルシュミレート」と呼ばれる戦闘用の訓練場がある。  学生にとっての人気場で、場所にも限りがあるため、基本的には予約制となっていた。  “あと30分”というのは、そういう意味だった。  ルシアの方はあまり乗り気ではなかった。  予約を取ったのはクラウスだ。  ルシアは大の練習嫌いだった。  「今日こそはやっつけんぞ。いいか、俺が先手を取る」  「ご勝手に」  2人には師匠がいる。  師匠であり、担任の教師。  クラス3の「スキル科目」担当、ジークハルト・レインズ。  2人が入学してきた頃から、彼は2人の“教育係”として学校側から依頼されていた。  ——そう、主に、ルシアの教育係として。
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