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10.こっちはぜんぜん寝てない
「いいんだ。実は学校にはあまり行ってない。なんていうか、不登校みたいな感じだからさ」
初めて聞く話だった。不登校だと打ち明けた星也は学習塾には欠席せずに通っているから、余計に意外な感じがした。
考えてみれば星也は隣の中学に通っているから、その校区内でも学習塾はいくつかある。わざわざ郁人の通う中学の校区内にある学習塾に通う必要性みたいなものはあまりない。
この街はそれなりの地方都市だから、中学校の校区も狭く隣り合っているし、違う校区にある学習塾に通う中学生だってめずらしくはない。より難しい高校やその先の大学受験を見据えて、レベルの高い学習塾に「越境」して通う中学生だっている。
それでも隣の中学に通う星也が、わざわざ遠めにあるこの塾に通っている理由がわかった気がした。自分の通う校区内にある塾になど、あまり通いたくない気持ちもわかる気がする。
「ある日突然、眠れなくなったんだよ。夜になって寝ようと思ってベッドに横になる。でも、頭の中にいろんなことが思い浮かんで。それで朝まで眠れなくなることが続いた。それいつのまにか朝になって中学に登校する時間になってしまう。でも、こっちはぜんぜん寝てないから、まともに登校できる状態じゃない」
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