ラブレター

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 喪服の黒は深い色がいいとされているらしい。  あの人がそう言って、丁寧に教えてくれたのは、自分の葬儀を考えていたのかもしれない。でも、知らなくても大丈夫だったみたいだ。  秘書やら顧問弁護士やらがよってたかって、私の服装を決めてくれた。着物だけは嫌だと主張した。  ワンピースとジャケットはマットな黒。  これが深い色なのかあ。全然、おしゃれじゃない。 「黒真珠のネックレスに負けそう」  デパートの外商に勧められるまま、あの人が買ってくれたネックレスだ。すごく高かったのを覚えている。 「それはやめておいた方がいいですよ。もっと、お年を召された方がつけるもので、二十歳代の方には少し老けたイメージがあるので」  秘書にそんなことを言われた。  老けて見えるのは困る。これからは恋愛自由なんだから、いい男を探さなくちゃいけない。 「こちらはどうですか? ジェットと言って、イギリスのビクトリア女王が身につけたことで有名になったものです」  何だか、パッとしないマットな黒。  でも、女王様が身につけたものっていいね。それを身につけることにした。
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