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「ごめんなさい。ごめんなさい。峰岸様の願いを断ることなんて、私にはできなくて」
メイドの心愛が泣いて謝ってくる。
警察の事情聴取から帰ってきたところでまだ、着替えていない。胸開きの広い赤いドレスは皺がよって、場末のキャバレーを思わせる。屋敷の女性従業員はふだん、メイド姿だから、こんなにセクシーな服が似合うとは思わなかった。
夫の趣味で従業員は若くて可愛い子が集められている。だから、起きるべくして起こったとも言える。
腹上死。
まあ、私とやっている時に死ななくてよかったという気持ちしかない。
「泣かなくてもいいわよ。感謝しているぐらい。あの人も好きなことをしている最中に死んで満足でしょう」
笑い出したい気持ちを抑えて、目を伏せる。
おかげで私は若くして大金持ちだ。
残念だったね。私から妻の座を奪うつもりだったんでしょう。
八十を超えた大富豪で女好き。それから、妻はメイド上がり。つけ入る隙がありそうだもんね。
「それより、あなた、お通夜とお葬式の時に横にいてくれない?」
「え?」
心愛の目が丸くなった。
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