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そうして今、俺は雪夜に刺されて地面に埋まっている。
(人を刺すの、下手くそだなぁ、雪夜)
痛いばかりで苦しいばかりで、まだ死ねない。今までもほんとうは殺し損ねてばかりいたのだろうか。それとも俺だけがこうなのか。
俺だから、殺し損ねてしまったのか。
唯一の親友だから躊躇いが生まれた――なんて期待してみたが、おそらく違う。たまたまこうなっただけだろう。
俺の体もまた、雪夜に執着していた他の連中と同じ山に捨てられている。俺も奴らと同じなのだ。
一方的に愛を押し付けていた者たちと、何も変わらない。
(月が、眩しい)
顔はすべて地面の外に出ている。月明りが煌々と俺を照らしているから、通りかかる人さえあれば俺の死体はきっとすぐに見つかるだろう。
さすがに、明るい時間にならないと人は来ないだろうけれど。
ぼんやりと開けていた目を閉じる。
俺を埋める時の雪夜の顔を見てみたかった。人を埋める最中の雪夜はきっと、最も罪にまみれていたことだろう。
(俺が最初の、汚れ)
一番初めに見つかる死体は俺だ。俺が見つかるのを皮切りに、他の死体も続々と見つかるに違いない。
白く綺麗な雪夜を初めて罪で汚すのが自分だと思うと、幸福じみた感覚さえ覚えるから不思議だ。あれほど雪夜が汚れるのを厭っていたというのに。
眼裏に描き出した雪夜の像が黒く霞んでいく。
(雪夜……)
罪を纏っても綺麗だと、俺は見とれて眼裏の雪夜に自分から流れる血を塗った。
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