罪業

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罪業

 黒田と龍崎は、幼少期からの親友であり、共に多くの時間を過ごしてきた。しかし、最近、黒田の心には龍崎の恋人、美香に対する秘めたる思いが芽生えていた。  ある日、黒田は龍崎を呼び出し、話を切り出す。 「龍崎、ちょっと話があるんだ」  黒田は真剣な表情で言った。 「どうした、黒田?珍しいな、こんな真剣な顔して」龍崎は笑顔を浮かべて答えた。 「実は…お前に決闘を申し込みたいんだ」  黒田の声には決意が感じられた。 「決闘?お前、本気か?」  龍崎は驚きを隠せなかった。 「本気だ。お前と俺、どちらが強いか、今ここで決めたい」  黒田の目は鋭く光っていた。  龍崎はしばらく黙っていたが、やがてその提案を受け入れた。「分かった。お前がそこまで言うなら、受けて立つ」  二人は静かな場所へ移動し、決闘の準備を整えた。しかし、黒田は密かに龍崎の弱点を調べ上げ、その情報を使って勝利を収める計画を立てていた。  決闘が始まると、黒田は龍崎の攻撃をかわし続け、反撃の機会を伺っていた。そして、龍崎が一瞬の隙を見せたその時、黒田はその隙を見逃さず、攻撃を仕掛けた。 「くそっ…黒田、お前…!」  龍崎は痛みと驚きで声を上げた。 「これで終わりだ、龍崎」  黒田は冷徹に言い放ち、決定的な一撃を放った。  龍崎は地面に倒れ込み、動かなくなった。黒田はその姿を見下ろし、胸の奥に深い罪悪感を感じながらも、自分の勝利を確認した。  数日後、黒田は美香に近づき、龍崎のことを話した。 「美香、龍崎は…俺との決闘で負けた。もう、彼は戻ってこない」黒田の声は震えていた。  美香はその言葉にショックを受けたが、次第に黒田に心を寄せるようになった。そして、二人は恋人同士となった。しかし、黒田の心には常に龍崎を裏切った後悔と罪悪感がつきまとっていた。  ある夜、黒田は美香と共に過ごしながら、その思いを口にした。 「美香、俺は…龍崎に卑怯な手を使って勝ったんだ。お前を手に入れるために、友を裏切った」  黒田の声は涙で震えていた。  美香は黒田の手を握り締め、静かに言った。「黒田、過去のことは変えられない。でも、私たちがこれからどう生きるかは、私たち次第よ」  黒田はその言葉に救われるような気持ちになったが、龍崎への後悔は消えることはなかった。そして、その後の人生においても、黒田はその罪を背負い続けることになった。
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