ロックアイランド

運命

　龍崎は目を覚ますと、周りの景色が全く違っていた。古びた城や荒野ではなく、高層ビルが立ち並ぶ明るい繁華街が広がっていた。彼は気づいた時には令和時代にタイムスリップしていたのだ。

　戸惑いながらも龍崎は歩き出し、街の喧騒に身を任せる。その時、彼の目に一人の女性が異彩を放って映った。長い黒髪と透き通るような美しい肌を持つ、美しき女性が龍崎の前を歩いている。

「あの人は…」龍崎はその美しい姿に心を奪われ、その後を追いかける決意をした。

　美女は一瞬後ろを振り返り、龍崎を見つめた。彼女の瞳は深い懐かしさと驚きを含んでいた。

「あなた…」美女が口を開いた。
「すみません、お会いしたことがありますか？」
　龍崎は尋ねた。
　美女は微笑みながら答えた。
「いいえ、初めて会った気がしないわ。でも…あなたの目、どこか懐かしい気がするの」
　その言葉に龍崎はふと、かつての記憶が蘇ってくるような感覚を覚えた。そして、彼女の名前が浮かんだ。
「美香…？」
　龍崎は驚きを隠せなかった。

　美香も同様に驚いた表情を浮かべながら、ゆっくりと頷いた。「ええ、私の名前は美香です。でも、どうして…あなた、私の名前を知っているの？」
　龍崎は答えようとしたが、言葉が詰まった。彼の心には、この出会いが何か大切なものであることを感じていた。
「もしかして…運命的な出会いっていうのは、こういうことなんですね」
　龍崎は微笑んで言った。
　美香も微笑み返し、二人の間には言葉を超えた深い絆が芽生えていた。

　龍崎はステアリングを握り、美香は横に座っていた。街の明かりが車内に差し込み、外の景色がぼんやりと見える。窓からは繁華街のネオンがキラキラと光っていた。
「この街、本当に新鮮だね」
　龍崎が言った。
　美香も微笑みながらうなずいた。
「ええ、初めて来たところなの？」
「そうだ。ここに来る前、どこかで見たことがあるような気がするんだ」
　龍崎は真剣な表情で答えた。
　二人の会話が途切れると、車内の静けさが気まずい雰囲気になった。
「そうだ、この曲を聞いてみたい」
　龍崎はステアリングを握り、美香は横に座っていた。車内にはフジファブリックの『若者のすべて』が流れている。メロディーが静かに響き渡り、二人の心に寄り添っていた。美香は窓の外を眺めながら、口を開いた。
「この曲、なんだか切ないけど、心地よいわね」
　龍崎も微笑みながらうなずいた。
「そうだね。この曲を聴きながら、この街の雰囲気がより深く感じられる気がする」
　車は街灯の下を通り過ぎ、人々の姿や夜景が流れていく。二人は音楽と共に、互いの存在を大切に感じていた。
「龍崎、ありがとう。このドライブ、とても楽しいわ」
　美香がそっと言った。龍崎は美香の手を取り、優しく握った。
「こちらこそ、美香。君と一緒にいる時間は、本当に特別だ」
　二人の笑顔が車内を満たし、フジファブリックの曲が優しく背景で流れ続けた。