雌雄

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雌雄

 黒田は夢から覚めた。尊氏を倒した夢縁起がいい。黒田はロックアイランドを目指した。  ロックアイランドの中心にそびえ立つ城の中、足利尊氏は忠実な部下であり腹心であった龍崎の死を知り、深い悲しみに包まれていた。龍崎の死が伝えられたその日、尊氏は玉座の間で一人、龍崎の遺品を手にして涙を流していた。 「龍崎…お前がいなくなってしまうとは…」尊氏はその遺品を握りしめ、声を詰まらせた。  側近の一人が慎重に近づき、低い声で言った。「尊氏様、龍崎様の死は黒田という男の仕業です。彼は卑怯な手を使い、龍崎様を打ち倒したのです」  尊氏の顔には怒りが浮かび上がり、その瞳には決意の光が宿った。「黒田という男が…龍崎を…許せん!この手で必ず葬ってやる」  尊氏は立ち上がり、力強い声で命令を下した。「側近たちよ、黒田を探し出し、彼を潰すための策を練るのだ。龍崎の仇を討たなければならぬ」  城内に緊張感が漂う中、尊氏の命令に従い、側近たちはすぐに動き出した。彼らは情報網を駆使し、黒田の居場所を探り始めた。  一方、黒田は龍崎の恋人、美香と共に過ごしていた。しかし、心の中に抱える罪悪感と恐れは日に日に増していった。 「黒田、どうしたの?最近、ずっと悩んでいるみたいだけど…」美香は心配そうに尋ねた。 「美香、実は…」黒田は一瞬躊躇したが、やがて真実を打ち明ける決意をした。 「足利尊氏が俺を狙っている。龍崎の仇討ちのために、俺を潰そうとしているんだ」  美香は驚きと恐怖で目を見開いた。 「そんな…どうするの?」 「逃げるしかない。でも、もう逃げられないかもしれない」  黒田の声には絶望が滲んでいた。  その頃、尊氏の側近たちは黒田の居場所を突き止め、計画を練り上げていた。尊氏自らも黒田を追い詰める決意を固めていた。 「尊氏様、黒田の居場所がわかりました。彼は市内の隠れ家に潜んでいます」  側近の一人が報告した。  尊氏はその報告を受け、力強く頷いた。 「よし、全軍を動員して黒田を包囲し、一気に攻撃を仕掛けるのだ」  数日後、尊氏の軍勢は黒田の隠れ家を包囲し、圧倒的な力で攻撃を開始した。黒田は美香と共に必死に逃げようとしたが、包囲網はすでに完成されており、逃げ場はなかった。 「黒田、これで終わりだ」  尊氏は冷酷な笑みを浮かべながら黒田に近づいた。 「尊氏…龍崎のことは本当に申し訳なかった…でも、これは生きるために仕方なかったんだ…」黒田は震える声で言った。 「言い訳は聞きたくない。龍崎の仇を討つため、そしてお前の罪を償わせるために、ここで終わりにしてやる」尊氏は剣を抜き、黒田に向けて構えた。  黒田は最後の力を振り絞り、剣を抜いて尊氏に立ち向かった。しかし、尊氏の圧倒的な力の前に、黒田はなす術もなかった。  数瞬後、黒田は地面に倒れ込み、息絶えた。尊氏はその姿を見下ろし、静かに剣を収めた。 「龍崎、これでお前の仇を討った。お前の魂が安らかに眠れることを祈っている」  尊氏はそう呟き、黒田の亡骸に背を向けて歩き出した。  その後、尊氏は黒田の恋人であった美香を保護し、彼女に対しても謝罪の言葉を述べた。「美香、すまなかった。お前の恋人を失わせることになってしまったが、これが運命だったのだ」  美香は涙を流しながらも、尊氏の言葉に感謝の意を表した。「ありがとう、尊氏様。これからは、龍崎の魂が安らかに眠れるよう、私も祈り続けます」  こうして、足利尊氏は龍崎の仇を討ち、黒田の罪を裁いた。しかし、この出来事は彼の心に深い傷を残し、今後の人生においてもその影響を与え続けることとなった。
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