『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

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 放課後。  梨々は『ちょっとトイレ』と玲香に告げ、教室から出て行った。  玲香は、今だとばかりに、梨々の想い人である真人に近付いた。 「ねーねー、小川くん。今日も公園行って、絵を描くの?」  ニマニマ笑いで、帰り支度をしている真人に声を掛ける。  彼は横目で玲香を見、『描くけど。それが?』と素っ気ない。  梨々のことで、普段からさんざんからかわれているので、彼女に苦手意識を持っているのだ。 「昨日も梨々、公園にいたよね? その時、何か見なかった?」 「何かって?」 「だからー。梨々、じーさ――、おじーさんと、楽しそうに話してなかった?」 「……話してたけど。それがナニ?」  真人の返答に、玲香は『ほほう?』と、内心で感嘆の声を上げた。 (絵を描いてる間でも、一応、梨々の様子がわかる程度には、気にしてるんだ?)  予想以上に脈アリな気配を感じ取り、玲香は俄然、からかう気満々になった。 「フッフッフ。二人の仲良さげな雰囲気、どー思う? 何か感じなかった?」 「何かって?」 「何かは何かよ。『妙に親しそうだな』とか、『何話してるんだろう?』とかって、気にならなかった?」 「べつに。知り合いなのかな、くらいしか思わなかったけど」 「へーえ。そっかー。そーなんだー?」  終始、ニマニマ笑いを浮かべつつ、意味深な反応を示す玲香に、いい加減ウンザリしたのだろう。真人は玲香を軽くにらんだ。 「何なんだよ、さっきから? 何が言いたいんだ?」  イラ立ちを隠そうともしない、不機嫌そうな声だ。  玲香はケロリとした顔で、『フッフーン。どーしよっかなー? 教えてあげよっかなー?』などと、もったいぶった態度を貫いている。 「答える気がないなら、もういいよ。俺、行くから」  とうとう我慢の限界に達したらしい。真人はカバンを引っつかみ、風呂敷で包んだ四角くて平べったい物体(絵を描くパネルらしい)を小脇に抱え、玲香の前を通り過ぎた。  玲香はフッと笑った後、去って行く背中に向かい、 「梨々ねー? あのおじーさんに会った瞬間、メチャクチャときめいちゃったんだってー!」  そう声を掛けたのだが。  真人はその場で立ち止まり、『えッ!?』と甲高い声を上げて振り返った。
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