『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

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 梨々の目に、うっすらと涙がにじんでいる。  玲香は背筋にヒヤリとしたものを感じながらも、誰だったのか訊ねた。 「お母さんも、詳しくは知らないって。でも、ばあばにその写真見せられて、『この人、お母さんの初恋の人だったらしいわよ』って、コッソリ教えてもらったんだって」 「え!? おばーさんのじゃなくて? おばーさんのおかーさん!?」 「うん。それでね? 『名前知ってる?』って訊いたら、『確か、カジ……ナントカさんって、変わった名字だった気がする』って……」 「カジナントカ!?……って、それもう間違いないじゃん! おばーさんのおかーさんの初恋の人ってことなら、鍛冶屋敷さんのおじさんとか……とにかく、血が繋がってる人なんじゃないの!?」 「……やっぱり、そうとしか思えないよね?」  梨々の両目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。 「ちょ――っ! 何で泣くワケ!? アンタが言ってたんでしょーが、先祖の記憶がどーのって! その説が証明されたかもしれないのに、どーして泣かなきゃいけないのよ? 当たって喜ぶとこじゃないの?」  急に泣き出した梨々を前に、玲香は焦り、キョロキョロと辺りを見回す。  案の定、教室中の生徒の注目は、梨々一人に集まっていた。 「だって。だって、ばあばのお母さんが……ひいばあばの初恋がっ」  絞り出すようにそれだけ言うと、とうとう梨々は、両手で顔を覆い、声を上げて泣き出した。
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