『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

14/17
前へ
/17ページ
次へ
 その日の放課後。  落ち着きを取り戻した梨々から、玲香は話の続きを聞いた。  セピア色の写真に写っていたのは、梨々の曽祖母の初恋の人で、戦争に赴き、若くして亡くなってしまったのだそうだ。  曽祖母は嘆き悲しみ、適齢期だったにもかかわらず、十年ほどは結婚する気になれなかったらしい。  だが、十数年後。  穏やかで誠実な梨々の曽祖父と出会い、結婚。二児を授かる。  祖母から聞いたことによると、曽祖母は、曽祖父に悪いと思ったのか、戦争で散った初恋の人の話は、彼の前ですることはなかった。  ただ、曽祖父のいないところでは、晩年、ポツリポツリと、語ってくれることがあったのだそうだ。  初恋の彼は、親同士が決めた許嫁で、幼い頃から良く知っていたため、互いに惹かれ合っていたのだという。  だが、戦争が始まり、『せめて結婚だけでも』と急かす周囲に、初恋の人は、頑として首を縦に振らなかった。  曽祖母のことが嫌いだったから、ではない。  彼女を未亡人にしてしまうかもしれないと思うと、どうしても決心がつかなかったかららしい。  曽祖母は『それでもいい』と、彼に泣いてすがったそうなのだが。  彼の決意は固く、曽祖母は、承知するしかなかったのだそうだ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加