0人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の放課後。
落ち着きを取り戻した梨々から、玲香は話の続きを聞いた。
セピア色の写真に写っていたのは、梨々の曽祖母の初恋の人で、戦争に赴き、若くして亡くなってしまったのだそうだ。
曽祖母は嘆き悲しみ、適齢期だったにもかかわらず、十年ほどは結婚する気になれなかったらしい。
だが、十数年後。
穏やかで誠実な梨々の曽祖父と出会い、結婚。二児を授かる。
祖母から聞いたことによると、曽祖母は、曽祖父に悪いと思ったのか、戦争で散った初恋の人の話は、彼の前ですることはなかった。
ただ、曽祖父のいないところでは、晩年、ポツリポツリと、語ってくれることがあったのだそうだ。
初恋の彼は、親同士が決めた許嫁で、幼い頃から良く知っていたため、互いに惹かれ合っていたのだという。
だが、戦争が始まり、『せめて結婚だけでも』と急かす周囲に、初恋の人は、頑として首を縦に振らなかった。
曽祖母のことが嫌いだったから、ではない。
彼女を未亡人にしてしまうかもしれないと思うと、どうしても決心がつかなかったかららしい。
曽祖母は『それでもいい』と、彼に泣いてすがったそうなのだが。
彼の決意は固く、曽祖母は、承知するしかなかったのだそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!