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「それでね。初恋の人は、戦争に行くっていう前日に、ひいばあばに会いにきてね? 手紙と、あの写真だけを渡して、去って行ったんだって。その時の写真が、あのセピア色の写真。手紙もね、ちゃんと大切に取ってあって――」
「え? じゃあ、梨々も読んだの?」
「うん。ひいばあばに宛てた手紙なのに、申し訳ないなとは思ったんだけど……。ばあばも、お母さんも読んじゃったそうだから、私だけ遠慮するのも、気にし過ぎかなと思って」
「そっか。……で、どんな内容だったの?」
「うん……。ひいばあばを、すっごく大事に想ってたんだなぁってことが、伝わってくるような内容だった」
「……そ、か……。なんだか、切ないね」
「うん」
しばらくの間、二人は教室に残り、複雑な想いを噛み締めていた。
戦争がなかったら、結ばれていたかもしれない二人。
しかし、二人が結ばれていたならば、梨々は生まれてきていなかったのだ。
「悲恋は切なくて、辛いことだけど……」
「諦めずに生きてれば、その先に……明るい未来が待ってるかもしれないんだね」
しみじみした後、二人は顔を見合わせ、フフッと笑い合った。
梨々は椅子から立ち上がり、
「そろそろ行かなきゃ! 私、今日も鍛冶屋敷さんと約束してるの。それでね、あの写真と手紙も持ってきたんだ。写真の人は、ホントに鍛冶屋敷さんと繋がりのある人なのかどうか、確かめてもらおうつ思って」
「あっ。じゃあ、アタシも行っていい?」
「もちろん。一緒に確かめよう?」
二人はカバンを片手に持ち、もう片方の手を繋ぎ合うと、勢いよく教室から飛び出した。
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