『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

15/17
前へ
/17ページ
次へ
「それでね。初恋の人は、戦争に行くっていう前日に、ひいばあばに会いにきてね? 手紙と、あの写真だけを渡して、去って行ったんだって。その時の写真が、あのセピア色の写真。手紙もね、ちゃんと大切に取ってあって――」 「え? じゃあ、梨々も読んだの?」 「うん。ひいばあばに宛てた手紙なのに、申し訳ないなとは思ったんだけど……。ばあばも、お母さんも読んじゃったそうだから、私だけ遠慮するのも、気にし過ぎかなと思って」 「そっか。……で、どんな内容だったの?」 「うん……。ひいばあばを、すっごく大事に想ってたんだなぁってことが、伝わってくるような内容だった」 「……そ、か……。なんだか、切ないね」 「うん」  しばらくの間、二人は教室に残り、複雑な想いを噛み締めていた。  戦争がなかったら、結ばれていたかもしれない二人。  しかし、二人が結ばれていたならば、梨々は生まれてきていなかったのだ。 「悲恋は切なくて、辛いことだけど……」 「諦めずに生きてれば、その先に……明るい未来が待ってるかもしれないんだね」  しみじみした後、二人は顔を見合わせ、フフッと笑い合った。  梨々は椅子から立ち上がり、 「そろそろ行かなきゃ! 私、今日も鍛冶屋敷さんと約束してるの。それでね、あの写真と手紙も持ってきたんだ。写真の人は、ホントに鍛冶屋敷さんと繋がりのある人なのかどうか、確かめてもらおうつ思って」 「あっ。じゃあ、アタシも行っていい?」 「もちろん。一緒に確かめよう?」  二人はカバンを片手に持ち、もう片方の手を繋ぎ合うと、勢いよく教室から飛び出した。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加