『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

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「もうすぐ夏休みっていう、この浮かれた季節に。しかも、最高気温が毎日のように更新されてく、殺人級に暑い中。野外で、暗くなるまでひたすら絵を描いてる男を、ただボーッと眺めてるだけなんでしょ? ご苦労なことね」  からかい口調でニヤついてみせた後、玲香はひょいっと肩をすくめる。  梨々は微かに頬を染め、うらめしげに玲香をにらみつけた。 「うるさいなぁ。恋したことない玲ちゃんには、わからないのよ」  言い返しながら、窓辺から自分の席(ちなみに玲香の後ろだ)に移動し、乱暴に椅子を引いて腰を下ろす。  玲香は首だけ後方に向け、 「あら。したことあるわよ? 二次元限定なら、数え切れないくらい」  さしてダメージを受けていないようで、ケロリとした顔で言い返す。 「二次元じゃなくて、現実の話!」 「現実だって二次元だって、恋は恋でしょ?」 「ちっがーう! 二次元の人に恋したって、ムナシイだけじゃない。想像の中でしか会えないし、触れないし」 「へーえ。梨々は、触れなきゃ好きになれないの? 小川くんには、いつも触ってるんだ?」 「なっ、何よそれ!? 触ってるワケないでしょ!」  瞬時に赤面し、梨々はキョロキョロと辺りを見回す。  誰かに聞かれたら――特に、片恋相手の小川真人に聞かれたらどうしてくれる、といった感じだ。  玲香はククッと笑い声を漏らし、 「そーよねぇ? いつも見てるだけだもんねぇ? 相手は幼馴染なのに、ボディタッチすらできないなんて。触ろうと思えばいつでも触れる、現実世界なのにねー? そっちの方が、よっぽどムナシイんじゃない?」  意地の悪い視線を梨々へと送り、念押しするかのように、もう一度ククッと笑った。 「うるさいなぁもうっ! 玲ちゃんのバカッ!!」  教室中に梨々の声が響き渡った瞬間。  ガラリと戸が開き、担任の教師が入ってきた。
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