『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

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 玲香は次のおかずへと箸を伸ばし、口元に笑みを浮かべる。 「枯れ専ってのは、『枯れた男性専門』の略。要するに、枯れてる男の人……確か、四十代から五十代以降の年上男性のことだったと思うけど。そういう、経験豊富で落ち着いてる年代の男性が好きって人のことを、枯れ専って言うの。割れせんべいとは全くの別物よ」 「へー。かなり年上の男性を好きになっちゃう人のこと、枯れ専って言うんだ? 初めて知ったー」  梨々が感嘆の声を漏らすと、玲香は満足げにうなずいた。すごく得意そうだ。  勉強では梨々に敵わない(と言っても、微々たる差なのだが)ので、教えられることがあったのが、単純に嬉しいのだろう。 「あっ。でも、違うんだってば! 私は枯れ専とかじゃなくて!」  梨々は慌てて否定し、箸を握ったままの拳を机に叩きつけた。  玲香はモグモグと口を動かし、マグボトルに入ったお茶で、残りのおかずを一気に流し込む。  すっかり空になった弁当箱に蓋をし、両手を合わせて『ごちそうさまでした』とつぶやくと、梨々に向き直った。 「枯れ専じゃないなら、どーしてときめいたのよ? タイプだったからじゃないの?」 「私のタイプど真ん中は真人くん! 幼稚園時代から一ミリとも変わってない!」  握り締めた箸をブンブン振り回し、梨々は真顔で力説する。  玲香はマグボトルのお茶を一口飲み、 呆れたようにため息をついた。 「それは知ってるって。嫌ってほど聞かされてるし。……で? タイプじゃないなら、どーしてときめいたの?」 「だから! それがあれよ、あれ。遺伝ってヤツよ」 「は? 遺伝~?」 「うん。あ、えっと。遺伝って言うか……」  梨々は言いよどみながら、チラリと玲香の様子を窺う。  玲香の顔には、『難しい話なら聞かないわよ?』と書いてあった。
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