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「えーっと、だからね? 私はこう考えたの。そのおじいさんを見たのは、昨日が初めてだったし、顔が好みだったワケでもない。なのにときめいた。ものすごーく。ビビビビッって電流走っちゃうくらい。これっておかしいよね?」
「うん、まあ。おかしいっちゃ、おかしいかな?」
「おかしいわよ。好みでもないのにときめくなんて。私が、すぐ誰かを好きになっちゃう恋愛体質だって言うなら別だけど。昔から真人くん一筋だし。彼以外、好きになったことないし!」
ここが大事だと言わんばかりに、梨々は机をバンバン叩いて主張する。
玲香は『ハイハイ』とうなずき、親友の話を黙って聞いていた。
興奮冷めやらぬ様子で、 頬を紅潮させた梨々が、次いで放った言葉は。
「だからこれ、私の気持ちじゃなく、過去の人――先祖の記憶が、関係してるんじゃないかと思うの!」
両手で机を叩いて締めくくると、梨々は得意げに胸を張る。
玲香は、じいっと梨々の顔を見つめていたが、やがて、マグボトルをおもむろにつかんだ。グイッとお茶を飲み干し、ふうっと息を吐く。
再び梨々に視線を戻し、ジト目で一言。
「何それ?」
「えーっ? だから、先祖の記憶よ! わっかんないかなー?」
親友の素っ気ない反応に、梨々は不満そうに唇をとがらせる。
玲香はマグボトルをバッグにしまい、机横のフックに掛けると、さらに冷めた目を梨々に向けた。
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