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翌朝。
梨々の顔を見るなり、『で? じーさんと話したの?』と訊ねる玲香に、梨々は満足げにうなずいた。
「詳しい話は、昼休みにね!」
もったいぶって返事すると、ニマニマと笑いながら頬杖をつく。
すぐに結果を知りたかったが、玲香はグッと堪え、大人しく昼休みまで待つことにした。
「で? 結局どーなったのよ?」
いつものように机をくっつけ、弁当を食べている最中、玲香がしびれを切らしたように訊ねた。
梨々は意味ありげに笑い、大きくうなずく。
「もちろん、話し掛けたわ。あのおじいさん、鍛冶屋敷一って名前なんだって。珍しいよね」
「は? かじ……なんですって?」
「鍛冶屋敷。か、じ、や、し、き、は、じ、め。――ね? 珍しいでしょう? おじいさん、私がノートとシャーペン渡したら、こういう字ですって、漢字教えてくれたの」
梨々は机からノートを取り出し、開いて玲香の前に置く。
そこには、美しく整った字で、『鍛冶屋敷一』と書かれていた。
「へえー。確かに、こんな苗字の人初めて。しかも、すっごくキレイな字」
玲香は感嘆の声を上げながら、梨々のノートを覗き込む。
梨々は得意げに胸を張り、
「でしょでしょ? おじいさん、めっちゃ達筆なんだよね」
ニコニコと嬉しそうで、まるで、自分が褒められたかのようだ。
玲香は呆れ、『なんでアンタが得意そうにしてんのよ?』とツッコむが、照れ臭そうに、ペロリと舌を出すのみ。
(この反応……。もしかして、ホントにじーさんを好きになっちゃったって言うんじゃないでしょーね?)
訝しむ玲香だったが、梨々はただ、ニコニコと笑っている。
おまけに、今日も会う約束をしているという梨々に、心配になった玲香は、『アタシも行ってもいい?』と訊ねた。
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