『枯れ専じゃない』ことを証明するため、女子高生は『先祖の記憶、遺伝する説』を推す。

1/17
前へ
/17ページ
次へ
 この春、高校生になったばかりの安彦梨々(あびこりり)は、教室の窓枠に両手をつき、物憂げな表情で青い空を見上げていた。 「やっぱり、先祖の記憶って遺伝するのかな?」  ポツリと、独り言のようにつぶやく。  窓際の席で、いつものように文庫本を開いているのは、梨々の親友、浅長玲香(あさながれいか)だ。 「はあ?」  彼女はパタリと文庫本を閉じ、視線を梨々に向ける。彼女の眉間には、深いシワが刻まれていた。 「朝っぱらから、なに寝言みたいなこと言ってんのよ? 登校中に、頭でも打った?」 「え?……あ、ゴメン! べつに、難しい話をしようとしてるワケじゃなくて」  親友の顔が、不機嫌そうに歪んでいることに気付き、梨々は焦って首を振る。  玲香は、勉強があまり得意ではない。  そのことを日頃から気にしていているせいか、手には常に文庫本。  裸眼で充分生活していけるほど、視力は良いクセに、度の入っていないメガネを掛けている。賢く見られたいからだそうだ。  外見も賢そうに見えず、内面も賢くないという場合より。  賢そうに見えるのに、実は賢くない――という方が、バレた時のダメージは大きいと思うのだが。  とにかく玲香は、賢く見られたい系女子なのだ。   梨々も成績が良い方ではない。特に理数系は苦手だ。  なのに何故、学校に着いて早々、遺伝などという小難しい話をし始めたのかと言うと――。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加