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 SNSに、探してもいないニュースが流れてくる。  イスラム教の宗教施設、学校の設立を支援する法案についての議論。  難民に地方参政権を与えるべきだという意見。  不法難民の強制送還を求める「非人道的な」運動。  さっと目を通すことさえしていなかったそうしたポストが、最近はやけに頭に残る。  本郷六華の目に映る世界に、ふと思いをはせたりする。  考えたところで理解はできない。  そう思う。  人の痛みなんてわかるものではない。それは身に染みて知っている。    耳なじみのある声が聞こえてきて、顔を上げた。  夏休みのある夕刻、荒川の南の小さな駅。その西口を俺たちは待ち合わせ場所にした。  本郷ではない。  竹中至、里美響、そして里美の親友だという東条香。  その三人に俺を加えた面子で、夏祭りに行き、花火を見ようという、実にのどかなイベントだった。   竹中はダブルデートだといきごんでいたが、そうなる要素はひとかけらもない。 「よー牟田―!」   竹中ののんきな声が俺を呼んだ。  振り返ると、竹中と里美が手を振っている。  里美のとなりの背の高い少女が東条なのだろう。  スマホをポケットにつっこみ、俺は笑顔をつくった。           
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