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駅前のドンキでクロックスと二千円のジャケットを買い、急いでその場に戻った。
ちゃんと本郷が待っていたことに、なぜか泣きそうなほど心が揺れた。
「今からお前を俺の家に招待する。まさか辞退するような無礼はしないよな」
そう言った。
本郷は子供のような素直さで、うん、うんと頷いた。
事情は何も尋ねなかった。まともに話せる状態に見えなかったし、聞くまでもないことに思えた。
母が帰ってくるのは午後八時か九時で、まだ数時間の猶予がある。
そのときのことはそのとき考えればいい。どうせ母の反応なんて予想できない。
俺はもう、覚悟を決めていた。
何があっても、一度つかんだ手を放す気はなかった。
家に帰り、本郷を浴室に放り込んだ。
ウーバーで牛丼を頼み(本郷は宗教上の理由で豚肉を食べない)、そこで俺の財布は空になった。
本郷の脱いだものを洗濯機に投げ込む。
そうしてから、これでは風呂から上がった本郷の着るものがないことに気づいた。
本郷は細身だが、背は俺よりも高い。
ジャージか。俺の。
そう考えて、自分の部屋に服をとりにいったとき……
いろいろなことが立て続けに起こった。
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